六弦と四人組の部屋〜ビートルズ奏法研究所

ビートルズ(The Beatles)の楽曲における、ギターでの奏法解析やコード進行の分析など。コピーバンドや、コード進行の勉強に役立ちます。

With The Beatles

Till There Was You

2017/11/02

ジャズのスタンダードナンバーでありながら、ビートルズがやったことで妙に有名になった一曲。ボーカルをとっていることからも、ポールの提案によることは明らかで、”やかましい”初期ビートルズのアルバムの中に異色のカラーを醸し出してます。

「And I Love Her」で使うよりも先に、ガットギターが登場した最初の一曲となりました。

コード進行

イントロ

F F#dim Gm7 C7 F F#dim Gm7 C7

Aメロ

F F#dim Gm7 Bbm7
F Am7 Abm7 Gm7 C7 F Gm7 C7
F F#dim Gm7 Bbm7
F Am7 Abm7 Gm7 C7 F F7

サビ

Bb Bbm Am7 D7
Gm GmM7 G7 C7 Caug

エンディング

C B C F Db7(9)
F Fmaj7

ジャズの曲なので、コードもジャズのスタンダードな進行。イントロの F - F#dim(元はD7-9でしょう)- Gm7 - C7 はFのキーにおける Imaj - VI7 - IIm7 - V7 となることから、俗にイチロクニーゴーと呼ばれます。ジャズの曲では定番中の定番。

Aメロでは途中Bbm7を挟みますが、これがとてもおしゃれ。IVmはサブドミナントマイナーと呼ばれ、柔らかい響きが特徴ですが、J-POPなどでよく見られるようなベタな使い方と違い、非常にさりげない配置。その後に出てくるAm7-Abm7の半音下降も含めて、使われ方が絶妙です。

BメロはBb(IVmaj)からスタート。ポイントはGm7 - (GmM7) - G7 - C7でしょうか。普通ならGmM7のあとはGm7に行くのがほとんどですが、ここでG7をもってくることで、明るさを保っています。ラストのCaugはこの曲でも印象的な一発。

ちなみにライブではBメロの同じ場所が Gm7 - GmM7 - Gm7 / G7 - C7 となっており、Gm7を一回挟む感じになっている模様。ライブ盤は演奏も結構違うので、一番下に別枠で書いてます。

イントロ

イントロ

イントロ

下降の分散和音。コードを弾いてるだけなので、簡単です。

Aメロ

Aメロ

Aメロ

基本は分散和音ですが、弾いたり弾かなかったり。アドリブというよりはこう弾くと決めて弾いているような感じを受けますが、実際にバンドでやる際には暇が多すぎるので、薄くコードを弾いておいても良いと思います。ページの一番下にあるライブ版をコピーするのもおすすめ。

Am7 - Abm7 - Gm7 の箇所はジョージが上からかぶせて弾いているようにも聞こえますが、原曲では2本ともガットで良く聞き取れません。

繰り返し記号周辺の1カッコと2カッコのフレーズはどちらもオブリとして印象的なので、ここは是非決めたいところ。1小節目のカッコ内は2番以降に弾いているもので、こちらも印象に残ります。

ギターソロ

初期ジョージ、会心のギターソロ。別の人が弾いているんじゃないかと揶揄されたほど完成度は高いです。
ttwyソロ
ポジショニングはライブ映像で確認済み。おそらくこれで間違いないでしょう。

出だしは普通の単音ですが、3〜4小節目からコードが混じります。ここは譜面にないですがスタッカートがかかってます。その後の10fのセーハのようなところは、右手をダウンで弾きながら、左手指を引いた順番に先っぽから浮かせていくと、音が1音ずつ切れて良い感じになります。

半音下降のところもスタッカート気味。コードなので流しっぱなしになりがちですが、ピッキングと同時に常にコードを切っていくようにします。

その後のGb7はかなりフォームがきついので、どうしても指が届かなければ6弦2fを削ってしまうのも一手。


こちらは僕自身が弾いてみた動画です。参考にどうぞ。

エンディング

エンディング

エンディング

エンディング用に半音移動のにくいコード進行が付いています。伴奏もそれに合わせた細やかなオブリに。コード進行的にはFの後のDb7(9)が絶妙。上の譜面ではGb7になってますが、これは間違い。

ここはあまりリズムに正確にやるよりも、少しもったり気味に弾くと良い感じになります。

コードバッキング

普通のセーハをして押さえるバレーコードではなく、ジャズの手法にならって、下のような形のコードを使うとそれらしくなります。書いてませんが、半音下降のAm7-Abm7もGm7のフォームをずらして弾いています。
chords

バッキングをしっかり聞いてみると、随所に出てくるC7をC7(9)に、サビ前などに出てくるF7をF7(9)として弾いているようです。
7-9th

F#dimは1〜4弦を押さえるタイプのものを使い、3フレットずらしても同じコードになるディミニッシュの特性を生かして、下のような動きをしている場所があります。
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主にAメロの1段目、3段目ですが、やったりやらなかったりなので、完全にアドリブで入れている模様。

全体的には8ビートのシンプルなストロークで適当にコードを弾いているだけですが、そもそもの進行が難しいので、練習しないときついかもしれません。上のコード表を参考にする場合、開放弦をミュートして4本だけしか鳴らしていないようなコードが多いので、不要弦のミュートがこれまた難しいです。

ライブ版

ライブではガットではなく2人ともエレキで弾いていますが、内容は原曲に準じたもの。ただジョージのパートはかなり違うので、別個でこちらに載せます。

イントロ(ライブ)

イントロ(ライブ)


2,4小節目が大きく違います。

Aメロ(ライブ)

Aメロ(ライブ)

Bメロ(ライブ)

Bメロ(ライブ)

さすがに原曲並みに弾く量が少ないのもおかしいと思ったのか、ライブではほぼ全編決まったフレーズを弾いているようです。オブリともコードとも付かぬメロディライクなフレーズを歌の後ろで延々弾いてますが、これが邪魔にならず寂しくならない絶妙なさじ加減。もともとギタリスト、ジョージ・ハリソンは、目立たない細かなところに職人的センスを発揮するタイプですが、この曲ではそれがはっきりわかります。

ポイントはBメロに入ってからで、コード感を二音で演出する Bb - Bbm - Am7 あたりと、ラストのCaugのオクターブ上がってのアルペジオなどは、美しい流れを持ってます。

ちなみにライブ版はYouTubeにも流れてますが、音源としてもビートルズ・アンソロジー1に収録されています(同じもののようです)。

まとめ

いかにもポールの好きそうな曲ですが、ジャズミュージシャンであった親の影響もあるんでしょうか。バンドとしてもこういうのを馬鹿正直に演奏することで、後の作曲面での糧としていったんでしょうね。

この難しいコード進行を、譜面など出回らない当時、全て耳コピで演奏していたのであろうということを考えても、やっぱり並みの演奏能力じゃないことはうかがい知れます。

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