Penny Lane
Strawberry Fields Foreverとともに両A面シングルとして発売されたポールの傑作。メロディ、アレンジ共に最高の出来を誇り、ジョージ・マーティンをして「私が手がけた中で最高のシングル」と言わしめた名曲です。
リヴァプールでの思い出を歌った内容の歌詞は、軽快なメロディに乗せて、全くゆかりもないはずの日本人の我々にも深くイメージが湧き起こされるほどで、これを聴いてリヴァプールに赴こうとした人は多いのではないでしょうか。
秀逸な出来ながら、あまり後のライブで演奏されていないのはバンドサウンド然としていないせいか。
コード進行
Aメロ
B | G#m7 | Eadd9 | F#7 | B | G#m7 | Bm | |
G#m7-5 | G | F#7sus4 | F#7 | F#7sus4 | F#7 | ||
B | G#m7 | Eadd9 | F#7 | B | G#m7 | Bm | |
G#m7-5 | G | F#7sus4 | F#7 | E |
サビ
A | A/C# | Dadd9 | |||||
A | A/C# | Dadd9 | C#m7 | F#7 |
ラストサビ(転調後)
B | B/D# | Eadd9 | |||||
B | B/D# | Eadd9 | |||||
B |
単純なポップ系シャッフルナンバーでは到底くくれない、サビ部分の転調や、Aメロ後半の進行が凝りまくった摩訶不思議進行。
理論的にはAメロ後半はBmからBメジャー→Bマイナーの転調を含んでいると推察されますし、サビの転調は強引にE7を挟んでやっていると思われますが、メロディが一切破綻していないのが凄すぎます。意図なくやっているとも思われず、ポールの中ではメロディが出来た時点で、転調をある程度含んだ状態で頭の中にあったのではないでしょうか。
登場しないギター
一曲通して一切ギターが登場しません。曲の根幹をなすのはピアノとベース。ギターの登場度が低いMagical Mystery Tour内の中でもこれほど登場しないのも珍しい。
ピアノはコードを4分で弾いているだけですが、Aメロ最後のF#7sus4からはシャッフルのウラの部分にも音が入っています。
さて、お役御免となったギターですが、ここはギターシンセに登場してもらうしかありません。このサイトでは後期ビートルズの再現にギターシンセの有用性を再三説いています。バンドでビートルズを大量にやるとか、コピーバンドで幅広い曲をやっているギタリストなら一度導入してみても面白いですよ。
使う音色は主に3つ。
・ピッコロ
・トランペット
・ブラスセクション
この中でもトランペットはピッコロトランペットという音域の高いものです。
動画
ギターシンセを使って演奏した動画をこちらに。そこそこ再現出来るのが分かると思います。
演奏解説
フルート(ピッコロ)
フルートのように聞こえますが、音域的にはピッコロが正しいでしょう。ギターでは音域が低すぎるため、1オクターブ高い音で作っておきます。この音は曲の頭から4分打ちで登場します。
3小節目はEadd9のため、2弦7fを鳴らしています。これが再現度を高めるポイント。下段の最後に出てくるのは“stop & say hello”の後に登場するメロディを追いかけるフレーズ。重要です。
1番サビの後。トランペットソロの前には歌の隙間を縫って合いの手フレーズが出てきます(譜例後半部分)。ちょっとしたフレーズですが、曲のイメージを高めるために欠かせないフレーズで、これもピッコロの音色でいけるでしょう。
ここからは最後までピッコロは登場しません。一番最後にメロディとユニゾンする形で登場しますが、ここはトランペットと重なる部分が出てくるので、適宜どちらかを優先します。
ちなみにここは実際にはもう1オクターブ高いのですが、ギターでは1オクターブ下げてやる方が妥当でしょう。
ブラスセクション
これは結構低い音域でやっているので、ギターの音域のままで大丈夫です。トランペット、トロンボーンは音域的にギターと被りますしね。
このフレーズは曲のサビのイメージを左右する重要なもの。歌を歌うとき、これも一緒に歌っている人は多いでしょう。1番、2番のサビはこれを弾きます。
高い方と低い方のフレーズはL,Rで分かれて聞こえますが、ギターでは一本で両方まかないます。ギターシンセはブラッシングをまともに拾わないので、弦が離れたフレーズはピックと中指を使って個別に弾く方が確実。動画でもそうやってるので、参考にしてみてください。
2番サビのあと、歌詞が「Behind the shelter in the middle of〜」となるところから、2,4拍目をスタッカートでブラスの音が入ります。オクターブで重ねた音にしてますが、これもピックと中指を使って弾く方がいいでしょう。
3番サビからはピアノにかぶせてコードを弾いています。間に入るフレーズも変わります(3小節目)。ブラスの出番はここまで。
ピッコロトランペット
通常のトランペットよりも高い音域が出るピッコロトランペットが曲の主役。音色を作る際には、通常のトランペットを無理にオクターブ上げても構わないでしょう。ギターより1オクターブ上に設定。この楽器はほぼ間奏用。
ソロに入る前、歌の後ろでわずかになっているフレーズ。音色的には上で使ったブラスセクションのものに近いですが、もしこれを弾く場合はピッコロトランペットを使うだろうとのことで、その状態で採譜しています。耳を澄まさないと聞こえないレベルで、無理してやらなくてもOK。
こちらがソロ本編。出だしはむりやりハンマリングで弾きます。速すぎてピッキングは不可能でしょう。あとはコードをばらして弾いているような場所が多いので、音が重ならないように注意が必要なんですが、まぁあまり気にしすぎなくても大丈夫です。全体を通してみると、たまに突発的に速いパッセージが入るものの、出だしの6連刻みのフレーズに比べればマシですので、出だしがクリア出来れば何とかなるソロでもあります。
そして、ラストのこれですが、難易度的にはソロを上回ります。特に中段真ん中のフレーズはエグい。音の跳躍が強烈な上、弾きにくいギターシンセを使うというところから、音の出しやすい弦飛び(1弦→3弦)を選択しています。もう少し弾きやすいやり方があるという人はそれでやってもいいと思います。
最後の音はどうする
僕はシンセ音にスローアタックを付けて鳴らしてますが、実は2弦5fのハーモニクスを出して、ボリュームペダルを操作すると似たような雰囲気に出来ます。
ただ、ここは複数の音が混じっているので、ギターだけでやってもあまり意味はなく、バンドでやるならば普通にBを弾いて終わりにしておくのが無難と言えば無難でしょう。
まとめ
ちらっと触れましたが、Magical Mystery Tourというアルバムに収録された曲はギターの登場頻度が低い上、非常に凝った音作りをしている曲が多く、ビートルズの中でも指折りの親しみやすいナンバーを多数収録していながら、バンドでは手の付けにくい作品となっています。
生楽器での再現は不可能でしょうから、キーボードが複数用意できるのであればそれが現状ベストです。テクニックを持ったキーボーディストであれば、左手ピアノ、右手その他楽器で、一人で何とかできるかもしれません。そんな場合、ギターはクリーンで大人しくストロークでもしておいて、コーラスに全力を尽くしましょう。ただ、ギターでトランペットのソロを弾いている姿は見ている側からすると面白く、なかなか痛快ですよ。